いよいよ3月。
雪を乗せたトドマツというのは、いつみても絶品です。夏の針葉樹林の香りも好きですが、真っ白の雪がトドマツに乗ると、何といいうか、「俺を見ろ」と行っているように威張って、ドスンと立っている感じがします。
大きく手を広げるように枝を伸ばすトドマツは、動物たちのシェルターになり、根元の笹を食べたエゾシカの跡をよく見かけます。今年も12月から、雪に覆われた針葉樹の森を堪能させていただきました。いよいよ3月。十勝管内のエゾシカ猟は禁漁です。保護区に逃げ込んでいた鹿たちも自由の身になるのでしょうね。
「鹿は字を読める」と言いますが、必ずと言っていいほど、この看板のすぐ横に鹿は立っています。
針葉樹の森を歩いていると、いろんな音が聞こえます。凍ったトドマツの幹が裂ける凍裂の音は、大きい時はカーン、小さいときはパコン。静かな朝は、パコン、カコン、ポンとか、木霊が遊んでいるようないい音がします。
キリキリキリとクマゲラが飛んで行く音、クワックワッツとオジロワシ。ギャーギャーとミヤマカケス。たまにドサっとトドマツの枝から雪が落ちます。マイナス10度ほどの世界は、キーンとした空気に包まれながら、音のない世界に、冬にしか聞けない小さな音が聞こえてきます。
山岳部から平野部まで、独特な自然がぎっしり詰まっている十勝は、短い車の移動で、いろいろな自然に出会うことができます。その動物たちの動きを観察したり、写真を撮ったり。そんなことに夢中になっているうちに、あっという間に光は強くなり三月です。雪も溶け始め、川も流れ始めました。季節はしっかり動いて、あっというまに春になります。
平野部の畑も土が見えてくると、ハクチョウやタンチョウが戻ってきました。繁殖期を迎えたキタキツネのカップルも日中歩く姿をよく見かけます。
エゾモモンガの活動も安定していました。5、6箇所の巣穴を回りながら、どんな行動をするか、何時ころ出て、何時ころ戻ってくるか、各巣穴の条件によって、行動パターンに若干違いがあり、それを読み取り、予測する。カラスが鳴けば巣穴に飛んで戻ってきます。朝のツンとする冷たさや、早起きは日に日に辛くなりますが、自然に目も覚めるようになりました。
毎朝、毎晩のエゾモモンガの行動観察に合わせて、滑空ショットの自主練習ですが、なんとなく、「これで限界?」と思うこの頃です。何よりも「暗さ」が難題で、木の枝に止まっていたり、穴から顔を出してくれていれば、写真は撮りやすいのですが、一瞬にして木の枝から飛び立って、巣穴に戻るシーンは瞬きほどの速度です。そこで、飛行ルートと着地点をかなりの精度で予測して、ハルニレの枝先で食事をしているエゾモモンガに集中し、指先の冷たさというか痛さに集中力をと切れることなく、滑空を待ち。「飛んだ」と思うと、コースを変える。というのも普通。
明るさが10分でも違えば、シャッタースピードを速くできるのですが、写真というのは、行動観察も大事ですが、最後はカメラとレンズの機械に頼るのでしょうか?ああ、太陽を動かすことができたら、、、
おととい、町有林の保安林の伐採予定地を歩きました。伐採予定の木にはスプレーで印がしてあるので、エゾモモンガの巣穴がないか、歩いてみたら。雪の上に大量に残されているフンや食跡。2箇所ほどのエゾモモンガの痕跡がありました。エゾモモンガには何も知らされずに、住処を奪われてしまいます。残された自然を守ること、残す方法を考えることも、長く楽しむためには大事なことですね。