Birds&Animals Guide Service

BBC surport 2018 Jan

A few years ago, the British BBC stayed at the lodge and filmed the Siberian flying squirrel for nine days in January during the harsh winter, when temperatures were minus 20 degrees.

イギリスBBC放送撮影サポート9日間

 帯広畜産大学の野生動物学研究室の押田先生のご紹介で、イギリスのBBC放送のエゾモモンガの撮影をお手伝いさせていただくことになった。帯広畜産大学は昔からエゾモモンガの調査や保護活動に力をいれていて、エゾモモンガについての論文も数多い。夏のエゾモモンガの行動については、帯広畜産大学で把握してるが、冬の行動についてはサポートできないということで、私に話が回ってきた。今回の撮影はドキュメンタリー番組の中の1部で、極寒の自然を生き抜く野生動物のなかで、エゾモモンガがどのように冬を過ごしているかというテーマだった。

エゾモモンガは十勝の平野部の防風林や公園、神社から、標高の高い針葉樹の森、国立公園までと幅広く分布、今回は「雪深い寒さの厳しい世界で暮らすエゾモモンガ」というのが今回のテーマだったので、私の知るなかで一番寒い場所でなおかつ、針葉樹の美しい森で暮らすスタッフ(エゾモモンガ)を紹介することにした。この巣穴は鹿を探して山を歩いている時にたまたま見つけた巣穴だった。

エゾモモンガの行動は夜行性と言われ、夜明けから日の出までの1時間か日没から真っ暗になるまでの1時間が肉眼で観察することができ、撮影できるチャンスでもある。それが12月から2月という一年でも寒い時期の早朝と夕暮れ。ときにはマイナス25度まで気温が下がる世界。普通の人間なら1時間も巣穴の前でじっとしていたら、ギブアップしたくなる寒さのなか、9日間という撮影期間を、バッテーリや機材、寒さ対策など野生動物専門のカメラマンがどうするか。エゾモモンガの行動よりもカメラマンの行動のほうが私には興味深かった。

イギリスから2名、東京から1名の合計3名のクルーの荷物 荷物の量もワールドクラス 

12月から各場所の巣穴のチェックを終え、3つの巣穴にまで的を絞り撮影が始まる。熟練のカメラマンのケビンさんとの会話は、先週はコスタリカでウミガメのふ化の撮影だったとか、シロクマの恐怖のなかでの撮影の話し、マラリアに2度も感染したなど、自慢げに話す姿は本当に好きなんだと共通するものを感じた。

はじめの3日間はロケハンに徹し、撮影の条件に合う巣穴をリサーチャーのターシャさんと一緒に回る。その間中カメラマンのケビンさんは巣穴の前で張る。動物にプレッシャーを与えないように、巣穴の前にはカメラマンのケビンさん1人のみ、もしくは私と2人で静かに待ち。他の2人は別の場所のチェックや食料の調達、許可申請の確認などあちこち走る。効率のいい役割分担もまたさすが。

1月24日 朝6時に現地に到着、真っ暗な森に手が届きそうな星空のした、車のライトにダイヤモンドダストがキラキラと輝いていた。ピリピリする寒さが鼻にツンと突き刺さる。マイナス15度ほどの夜明けだった。

ゆっくりと明るくなった森で、現れるはずの時間になっても2匹のエゾモモンガが出てきただけで、活発に活動するわけでもなく、トイレだけをすませて巣穴に戻ってしまた。日の出前に活動を終えるはずのエゾモモンガが活動しなかったことで、昼に活動するのでは?と期待して、巣穴の前で待つ事1時間。

太陽も出てきた7時過ぎに一匹のエゾモモンガが現れた。


トイレを済ませたら木の上にのぼり、滑空して隣のハルニレの木に飛び移り、枝の先の花芽を夢中で食べている。位置を伝えようととするけど、これがまたとても難しい。

私:「うーんと、あの右側の太い枝の分かれめから3mくらい上の、向こうにのびている枝の、あの折れている30㎝くらい枝の、その50センチ上のあそこ」。


ケビンさん:「うーん、どこ?」


私:「よし、じゃあ、もう一度、下から。あの枝の、その先の・・・」


ただでさえ日本語でも難しいのに、これを英語で伝えなければいけない。いっそのこと、「カメラを貸して、私が操作するから!」と言いたくなるのをこらえつつ(と言っても大柄のケビンさんなのでモニターまでは私が背伸びしてやっとなので、辛い)。それでも、モニターを見ながら、奥の枝を見たりして、エゾモモンガをカメラに入れた。

カメラにさえ入れば、超ズームでも美しくモニターに映し出される姿は、さすがBBCカメラだった。




巣穴からでてきたエゾモモンガはハルニレの芽を30分から1時間半かけて食べたら、巣穴に戻り。10分から20分後には別のエゾモモンガ巣穴からでて、ハルニレを食べるという行動で午後1時まで撮影することができた。夜行性と言われるエゾモモンガが明るい時間に見せてくれて幸運だった。


撮影は8日間休むことなく、毎日続けられた。早起きの毎日だったけど、エゾモモンガたちとの出会いは、毎日違った行動や顔を見せてくれ、飽きない。


クルーたちも毎日エゾモモンガが出てくれ、撮影も順調に進んでいるお陰で、最初の2,3日は、待っている間は声を潜めて、物音立てずの撮影だったけど、4日後には、車のドアもバタン、待っている間中お菓子の袋をガサガサ、ゴソゴソ、「あっ、また出てきた」と大きな声を出して教え合うほど。エゾモモンガもまったく気にする事なく、毛繕いしたり、木をのぼったり、滑空したりとお互いにリラックスした撮影で日が経った。

バッテリーが冷えないように、暖かい帽子で包まれている


動物カメラマンのケビンさんの動物へのアプローチは、さすが素晴らしい野生との距離感だった。遠くから、少しづつ、動物の行動を観察し、理解しながら、どう動くかを、どこから撮影すべきかを見極める。1日、2日、3日と時間をかけながら、太陽の位置や行動パターンにあわせて、場所を決めて、彼らの行動をひたすら待つ。1日目、2日目に撮った映像と5日目に撮った映像はまったく違い、エゾモモンガの仕草、愛敬までを鮮明に撮影していた。それでも「8日間の撮影じゃ時間が足りない。ぜったいに満足しない」と言う。ここにずっといてもいい事になれば、おそらく2ヶ月くらいは平気でここでじっとしているだろう。だからこそ、プラネットアースやブループラネットのような「どうやってこんな映像をとるの?」という野生動物の撮影ができるのだろうとうなずけた。やっぱり、その道のプロフェッショナルというのは面白く(変態?)、とてもいい勉強になる。

コーヒーが入ったボトルと凍ったパンがあれば、おそらく3日は黙ってじっとしていることだろう。

ロッジに戻って撮影した映像を自慢げに見せてくれた。生で見てもとても可愛らしいエゾモモンガだけど、映像で飛ぶ瞬間やスロー映像をみるとその仕草が特別際立ってみれた。どのように編集、放送になるかが楽しみだ。



撮影が順調に進んだのも、各クルーたちの役割分担の徹底。そしてうちのスタッフ(エゾモモンガ)たちも約束以上に姿を見せてくれたお陰、さらにナギサさんの温まる料理も美味しくて、メンバー最高に楽しんでいただけた9日間の十勝滞在だった。

ナターシャさんから1ヶ月後にメールをいただきました。

Thanks so much again for being such wonderful hosts last month. Lucky lodge is such a beautiful home and your venison truly is the best thing I have ever eaten! It was a real treat to be shown around Hokkaido by such an enthusiastic and knowledgeable guide, thanks for taking us to the squirrels Yoshi! We've already processed the footage and it's looking fantastic – will send you some clips when I can :)

I just wanted to check whether you received our gift in the post? It should have arrived a few weeks ago but thought I'd better make sure in case it got lost in transit?

Hope to hear from you soon :)

Tash
Natasha Filer | Researcher
BBC Natural History Unit
EARTH FROM SPACE